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「女性活躍」の先へ。アーケム中国拠点が証明する、個が尊重される組織力【前編】

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「女性活躍」の先へ。アーケム中国拠点が証明する、個が尊重される組織力【前編】

「製造業の現場は、男性社会」――。そんなイメージを覆す拠点が、中国にあります。

社会全体で女性の活躍推進が叫ばれる一方、依然として女性の参入ハードルが高いとされる製造業界。そのなかにあって、アーケムの中国拠点、亚科迈高机能树脂制品(开平)有限公司(以下、ACK)は、全従業員の約7割を女性が占めるという稀有な組織です。

 

ACKではなぜ、これほどまでに女性たちがプロフェッショナルとして活躍し続けられるのか。そこには、役職を越えたオープンな対話と、現場に浸透している独自の企業文化がありました。

今回は、組織の最前線に立つ女性リーダーたちにインタビューを敢行。前編では工場長・部長職の6名、後編では課長職12名のエピソードを通じ、ACKが持つ「組織の底力」の源泉に迫ります。

 

 

|まっさらな「箱」から始まった、ACKの挑戦

―まずは皆さんのキャリアのスタートについて伺いたいと思います。
 皆さんは現在、工場長・部長として各部門を統括されていますが、入社当時はどのような状況だったのでしょうか?

謝月娥さん: 私が入社した当時はちょうどACKの立ち上げ時期で、設備も揃っておらず、「空っぽの箱」があるだけの状態でしたね。

 

 

唐淑乐さん: 私も謝さんと同じタイミングで入社しましたが、本当に「何もない」ところからのスタートでしたね。私たちの最初の仕事は、工場を動かすための基盤を自らの手で整えること。事務用品一つから生産設備に至るまで、自分たちで手配しました。当時はマニュアルも不十分でしたから、法規制を一から確認して設備を調達し、通関担当者と連携して輸入手続きを進める……。目の前の課題を一つずつ丁寧に解決していく毎日が、私たちの原点になっています。

 

魏霞さん: そうした環境もあってか、ACKには「目の前の仕事に真摯であれば、公平にチャンスが与えられる」土壌があります。私自身、最初は製造現場のスタッフとして入社しましたが、現在は部長職を任せていただいています。

 

 

|「できないこと」を数えるのをやめた

―魏霞さんは、部長という立場になられた後、大きなジョブチェンジも経験されたそうですね。

魏霞さん: はい。長年経験を積んできた製造部門から、未経験の技術部門への異動を経験しました。

打診を受けた時は、正直期待よりも不安で目の前が真っ暗になりましたね。自分はこれからも製造一筋でキャリアを積んでいくのだと思っていたので、未知の領域の責任者を務めるなんて、到底無理だと。最初は「私には知識も経験もありません。絶対にできません」と、かなり後ろ向きな回答をしてしまいました。

 

李艳慈さん: 私は、彼女が戸惑う姿を間近で見ていました。それでも、彼女なら必ずやり遂げると確信していました。

 

―なぜそこまでの信頼を寄せられたのでしょうか?

李艳慈さん: まず、彼女には長年の製造現場での実績がありました。製造と技術では役割こそ異なりますが、密接に連携する領域も多く、彼女のスキルや経験なら十分に対応できると考えたからです。

何より、彼女の「できない」という動揺は、裏を返せば「責任ある仕事を中途半端な知識やスキルで引き受けられない」という誠実さの現れだったからです。知識は後から学べますが、仕事に対する責任感は一朝一夕で身につくものではありません。現場を熟知し、誰よりも誠実に仕事に向き合ってきた彼女なら、たとえフィールドが変わってもその「誠実さ」を武器にやっていけるはずだと考えていました。

 

 

魏霞さん: そうした後押しがあったからこそ、今があると感じています。以前は自分に「足りないもの」や「できないこと」ばかり数えて不安になっていました。でも今は、「できること」に目を向けられるようになったんです。真剣に取り組んでいれば、いつか必ず「できる」に変えられる。そう前向きに考えられるようになりました。

 

|個々の「誠実さ」が部門を超えた結束力に

―魏霞さんの「『できる』に変えられる」という言葉が印象的です。
そうした個々の「誠実さ」や「前向きな姿勢」が、組織として大きな困難を乗り越える力になった瞬間はありましたか?

李艳慈さん: 最も印象深いのは、ある新製品の開発プロジェクトです。市場ニーズの急激な高まりを受け、極めて短期間で新仕様の製品を投入しなければならない局面がありました。通常、開発から量産まで半年から1年は要するところ、与えられた期間はわずか2か月。常識的には「不可能」なスケジュールでした。

 

―その高い壁を、どう乗り越えたのでしょうか。

李艳慈さん: 部署の垣根を超えた連携です。開発チームが原料の配合を検討し、そのデータが上がってきた数時間後には製造チームが試作、即座に品質保証チームがチェックしてフィードバックを戻す……。このサイクルをスピード感もって回し続けました。誰か一人が諦めた瞬間に瓦解するようなプロジェクトでしたが、誰一人諦めることなく、部署を超えて助け合う姿は、まさに当社の団結力を象徴する出来事でした。

 

―現場のスピード感ある連携は、まさに組織の強みですね。一方で、より長期的なスパンでの挑戦もあったとか。

杜奕さん:はい。私が印象に残っているのは、約1年にわたって全社で取り組んだ「AEO高級認証(最高ランクの公認事業者認定)」の取得プロジェクトです。これは中国税関から最高レベルの信頼を得るための認定ですが、その取得条件は極めて厳格で、全社的な対応が求められました。

そのため、財務、営業、製造、物流に至るまで、全部門がこれまでの慣習を見つめ直し、新しいシステムの導入や情報の精査、管理方法の再構築を同時並行で進める必要がありました。

それでも、「この認証を取得することで、より早く、確実に世界中のお客様へ製品を届ける」。その目的意識を全員で共有し、粘り強く課題を解消していきました。1年後にようやく認証を受けた瞬間は、あの達成感は今でも忘れられません。

 

 

 

|視座の変化、そして「自発的な組織」への挑戦

―皆さんは現在、工場長や部長として多くのメンバーを率いておられます。
課長職から現在の立場へと役割が変わった時、ご自身のマインドセットにはどのような変化がありましたか?

唐淑乐さん:最も変わったのは「責任」に対する捉え方です。課長職のときは、自分の頑張りや課の成果が認められることが純粋に嬉しく、自信にも繋がりました。しかし部長職になると、自分の判断一つがメンバーの生活や会社の未来に直結する。その重みを痛感するようになりました。

 

杜奕さん:これまでは自分自身や課の仕事に目を向けていればよかったですが、部長という立場になるともっと視野を広げる必要があります。「この判断が他部署にどのような影響を及ぼすか」「10年後のACKにとって正しい選択か」など、多角的な視点で物事を判断することが求められます。

 

―メンバーをまとめるうえで、意識されていることはありますか?

謝月娥さん:一人ひとりと真摯に向き合うことです。これは当たり前のようで、最も難しい。人にはそれぞれ異なる特徴、強み、そして悩みがあります。まずは先入観を持たずに話を聴く。そして、問題があれば一緒になって解決策を探る。公平に評価し、チャンスを与える。そんな「当たり前の誠実さ」こそが、信頼の土台になると信じています。

 

 

 

李春艶さん:私はメンバーに「自ら考え、動いてもらうこと」を徹底しています。トラブルの際、指示を出すのは簡単ですが、それではメンバーの成長に繋がりません。

「何が原因だと思う?」「どう解決していこうか?」と問いかけ、相手の答えがたとえ私が想定と違っていても、まずは否定せずに受け入れる。その上で「こんな視点もあるかもしれないね」と一緒に解決策を探っていく。そんな対話の積み重ねが安心感を生み、今ではメンバーのほうから「もっとこうしたい」という前向きな声が自然と上がるようになっています。

 

 

―そうした皆さんの姿勢が、活気ある職場の雰囲気を作っているのですね。

李春艶さん:そうですね。実際のオフィスを見ていただくと分かりますが、ACKのオフィスは本当に賑やかなんです(笑)。静まり返っている時間がほとんどない。それは集中していないというわけではなく、部署や役職に関係なく、常にどこかで業務に関する議論が行われているからです。一人で抱え込まず、その場ですぐに対話する「風通しの良さ」こそが、私たちの結束力の源泉かもしれません。

 

 

|女性活躍の先にある「プロフェッショナリズム」

―製造業における「女性活躍」は難しいとされていますが、皆さんはどのように考えますか?

魏霞さん: 私は、ACKの強さの本質は「女性比率の高さ」ではなく、「個々がプロフェッショナルとして尊重される環境」にあると考えています。性別による制限や偏った評価を排除し、一人ひとりを公平に見る。その土壌があるからこそ、結果として多くの女性が活躍する今の形があります。

「女性活躍」を目的とするのではなく、誰もが公平に尊重される文化を築く。そうすれば無理に掲げずとも、「女性活躍」は自然と形づくられていくものだと考えています。

 

李艳慈さん:私たちが工場長や部長という立場になれたのは「女性だから」ではなく、一人の人間として、その成果が評価された結果です。ACKには透明性があり、誰もが納得できる公平な機会があります。その土壌があるからこそ、私たちは本来持っている能力を最大限に発揮できているのだと感じます。

 

 


 

彼女たちのエピソードから共通して見えてきたのは、性別や部署の垣根を超えた団結力、そして目の前の仕事に真摯に向き合う姿勢でした。

彼女たちが体現する「互いを尊重し、高め合う文化」を原動力として、私たちはさらなる高みを目指して挑戦を続けていきます。