Magazineマガジン
NEW
グローバル132社で初の最高評価!ACM グリーンゾーン認定への道
NEW
グローバル132社で初の最高評価!ACM グリーンゾーン認定への道
2026年3月、アーケムの海外グループ会社であるArchem Malaysia SDN BHD(以下、ACM)が、現地の産業安全における最高ランクの証「グリーンゾーン」認定を取得しました。マレーシア・セランゴール州内で、大規模災害に繋がるリスクを持つ「化学・素材」カテゴリーに分類される企業が132社存在する中、同認定を獲得したのはACMが初の快挙となります。
■「グリーンゾーン」認定とは
マレーシアにおいて、産業重大事故危険源管理規則(CIMAH ※1)を極めて高い水準で遵守し、万が一の事故発生時にもその影響を工場内に封じ込め、外部への漏出・波及を防げる体制が整っていると認められた企業に対して、現地労働安全衛生局(DOSH)から授与される最高ランクの安全認証です。
認定を受けるためには、国が定める厳格な基準をすべての項目において高水準でクリアし、自律的に安全が守られている模範的な工場であることを実証する必要があります。
この認定の取得は、働く従業員や地域社会との強固な信頼関係の構築に寄与するだけでなく、顧客や投資家、グローバルパートナーからの信頼獲得による新たな投資機会の創出、さらには良質な雇用へも貢献します。
*1 CIMAH(シマー)
マレーシアの「産業重大事故防止規則(Control of Industrial Major Accident Hazards Regulations)」の略称。有害化学物質を一定量以上取り扱う施設に対し、大規模な火災や爆発、漏洩などの事故を未然に防ぐための管理体制を義務付ける、国家レベルの厳しい安全規制です。特に化学・素材企業には、重大事故リスクに対する徹底した設備対策が求められます。ウレタンや接着剤の製造に使用される有機溶剤は、静電気による火災リスクやガス中毒リスクを潜在的に伴うため、極めて厳格な安全基準の遵守が求められます。
「コンプライアンスを推進するのは『人』である」。
そんな力強い想いから生まれた、今回の快挙。その舞台裏には、一体どのようなドラマがあったのでしょうか。今回は、認定取得を力強くリードしたACM安全保全課のMohamed Khairi Musaさんに、背景にある地道な取組みとこれからの展望についてお話を伺いました。

|最高評価「グリーンゾーン」認定のハードルとその価値
―132社中初の認定、おめでとうございます。
この「グリーンゾーン」、認定取得はどのくらい難しいことなのでしょうか?
Khairiさん:ありがとうございます。
最高ランクの認定というだけあって、審査では単に「事故を起こしていない」という結果だけでなく、そのプロセスも含めた工場の「総合力」が問われます。最先端の環境・安全設備の完備はもちろんですが、それらを扱うスタッフの習熟度や、万が一の事態における迅速な判断力、日頃の組織文化までが評価の対象となります。
つまり、強固な「インフラ・体制」と、それを使いこなす「プロフェッショナルな人材」の両方が揃って、初めて取得できる難易度の高い認定だと考えています。
この認定を取得できたことは、当社が単に「ルールを遵守している」という段階を超え、一歩先を見据えた安全管理を日常的に実践していることが、国家レベルで証明されたことを意味しています。
―最高ランクの認定というだけあって、高いハードルがあるのですね。
なぜACMは「グリーンゾーン」認定を受けられたのでしょうか?
Khairiさん:はい。まず「インフラ・体制」の面では、常時モニタリングや厳格な設備検査による、危険化学物質の包括的な管理体制が認められました。さらに、現地の一般的な工場ではまだ導入の珍しい「油分離システム」や「排水のpHモニタリング」、溶剤エリアでの「静電気検査」など、法的義務にとどまらない先駆的なリスク排除を徹底しています。こうした予防的なアプローチが、現地当局(DOSH:労働安全衛生局)からの高い評価につながりました。
そして、これらを運用する「プロフェッショナルな人材」の育成も、今回の評価に大きく貢献していると考えます。ACMには日本本社との強い連携が背景にあります。そこで長年培われた日本基準の安全思想をベースに、現地仕様へと昇華させることで、義務を超える危機管理体制を可能にしました。外部機関と連携したシナリオベースの総合防災訓練、詳細なリスクアセスメントの実行、さらにはメンバー一人ひとりが責任を持つ「アカウンタビリティ(責任の自覚)の文化」の醸成など、安全を形骸化させない組織的な姿勢。これらが、業界標準を大きく上回るものとして評価されたと考えています。
|「文化」がもたらしたスピード完遂
―認定取得にあたり、非常にスピーディーにプロジェクトを推進されたとか。その秘訣を教えてください。
Khairiさん:緻密な計画と専門リソースの集中投入、そして「日本基準」の安全思想をベースとした組織力がうまくかみ合わさったからだと思います。
私たちは当初から明確な目標を掲げ、部門横断的なチームを配置しました。その結果、リスク評価や緊急対応計画の作成といった膨大なタスクを、高い精度を保ったまま同時進行できたのです。

―部門を横断することでスピードと精度を両立させたのですね。
Khairiさん:はい。加えて当局の担当官と、初期段階から「何が求められているのか」を継続的に、かつ密に話し合ったことも大きかったですね。彼らを「審査する側」として遠ざけるのではなく、「安全な現場づくり」という共通の目標を持つパートナーとして捉え、積極的に対話を行いました。このオープンな関係性が、余計な工数を最小限に抑え、効率的な進行を支えてくれたと感じています。
|「やらされる安全」からの脱却
―認定取得の裏側には、新しいルールや管理システムの導入もあったとか。
現場からの抵抗感もあったのではないでしょうか。
Khairiさん:ええ、正直に言えば、最初は戸惑いの声もありました。「今のままでも事故は起きていないのに、なぜこれほど細かな管理が必要なのか」と。
そこで徹底したのは、「なぜこの施策が必要なのか」という目的を粘り強く伝え続けることでした。こうした対応がすべて自分たちの安全を守り、作業の信頼性を高め、会社としての土台になるのだ、と。一つひとつの意義を丁寧に説明し、現場の不安に正面から向き合いました。
―形だけのルールではなく、一人ひとりが心から納得できるまで、対話を重ねられたわけですね。
Khairiさん:はい。そして、言葉だけでなく「行動」で示すことも大切にしました。実技研修やデモンストレーションを行い、システムを導入することで、これまで勘や経験に頼っていた部分がどのように見える化され、結果としてこれまでの業務がいかに安全で効率的になるかを具体的に示していきました。
また、トップダウンで決まった手順を押し付けるのではなく、現場のスタッフ自身が「どうすればこの手順をもっと良くできるか」を考え、改善に関与できる仕組みを作りました。自分たちが作ったルールであれば、愛着も湧きますし、守ろうという意識も自然と高まっていきました。
|役職に関わらずアイデアを採用する
―具体的にどのような取組みをされたのでしょうか。
Khairiさん:特に効果的だったのが、「Safety Innovation Challenge(セーフティ・イノベーション・チャレンジ)」という取組みです。これは、役職に関係なく全従業員から「どうすればもっと現場の安全性を高められるか」のアイデアを募る取組みです。
―全従業員に自分事化してもらうためのすてきな施策ですね。
その中で実際に採用されたものはありますか?
Khairiさん:たくさんあります。化学物質の移送手段の改良や、配管の設計強化、さらには異常をリアルタイムで検知するデジタル監視の導入など、現場ならではの実用的な提案が次々と寄せられました。
これらを順次導入したことで、安全性が向上したのはもちろん、スタッフの間に「自分たちの安全には自分たち自身で責任を持つ」という当事者意識が芽生えたことが何よりの収穫でした。

|コンプライアンスを推進するのは「人」である
―お話を伺っていると、ACMにとってのコンプライアンスとは、単に法律を守ること以上の意味を持っているように感じます。
Khairiさん: 仰る通りです。私は「コンプライアンスを推進するのは、どこまでいっても人である」と考えています。
どんなに素晴らしい安全システム、最新の監視ツール、完璧なマニュアルを揃えたとしても、それを最終的に運用し、判断を下すのは「人」に他なりません。もし働く人たちが無関心であれば、どれだけ高度なテクノロジーを導入しても、それは宝の持ち腐れになってしまいます。
―設備やシステムを揃えること以上に、それを使う一人ひとりの「意識」が重要だということですね。その先に、どのような理想の形があるのでしょうか?
Khairiさん:あらゆる事故が起きる前に、その芽を摘み取れている状態です。高度なデジタル監視システムと、研ぎ澄まされた感性を持つ従業員が、互いに補い合いながら連携している。そして、すべての意思決定において、常に「安全」が最優先のフィルターとして機能している。そんな状態が、私たちの目指すべき姿ですね。
結局のところ、真にリスクを遠ざけるのは、技術そのものではなく、それを使いこなす従業員一人ひとりの「意識」と「姿勢」です。私たちが現場スタッフの積極的な参画を促しているのは、彼らこそが安全管理の核であることを、メンバー自身に実感してほしいからに他なりません。
従業員が「これは自分たちが運用する、自分たちのためのルールだ」という当事者意識を持ったとき、コンプライアンスは「上から押し付けられた規則」ではなく、日々の業務のごく当たり前な一部になります。その状態に達して初めて、私たちが理想としてきた「安全文化」は完成形を迎えるのだと考えています。

|「グリーンゾーン」認定はゴールではなくスタート
―最後に、今後の目標をお聞かせください。
Khairiさん: 今回の「グリーンゾーン」認定取得は、ゴールではなくスタートだと思っています。
今後は、この高い安全基準を維持するにとどまらず、醸成された安全意識を土台にデジタル技術をさらに深く取り入れ、予測型リスク管理の精度向上に挑戦したいと考えています。また、私たちが今回培った知見を、自社内にとどめず広く社外にも共有していきたいです。そうした業界全体の底上げに貢献していくことも、私たちの果たすべき重要な役割だと考えています。
私たちが最終的に目指すのは、安全を単なる「義務」に留めず、「当たり前のこと」として、日々のオペレーションに溶け込ませることです。そしてそれをアーケムが世界に誇る「圧倒的な現場力(オペレーショナル・エクセレンス)」の源泉とすること。そうした積み重ねの先にこそ、従業員やその家族、地域社会、そしてかけがえのない地球環境を本当の意味で守り続ける未来があると信じています。
アーケムのマレーシア現地法人(ACM)が、現地労働安全衛生局(DOSH)から最高ランクの安全認証「グリーンゾーン」を取得しました。
■記事の主なポイント
・132社で初の快挙: セランゴール州の化学・素材企業132社の中で、厳格な産業重大事故防止規則(CIMAH)を極めて高い水準で遵守したとして、初の「グリーンゾーン」認定を取得。
・先駆的な安全インフラ: 法定義務にとどまらず、現地工場では稀少な「油分離システム」「排水pH監視」「静電気検査」などの予防的リスク排除を徹底。
・日本基準の安全文化: 日本本社の安全思想を現地に昇華させ、総合防災訓練や、全社から改善アイデアを募る「Safety Innovation Challenge」を通じて現場の当事者意識を醸成。
・持続可能な未来への挑戦: 認定取得をゴールではなくスタートと位置づけ、デジタル技術を活用した予測型リスク管理の向上と、業界全体の底上げへの知見共有を目指す。